塚江内蔵はパズル専門の探偵、多少冴子の事務所で助手として働いている。
最近、内蔵のところに隣町でパズル教室を開いている五十音表子(イソネヒョウコ)から
よく手紙が届く。どうも、ひそかに内蔵に思いを寄せているらしい。結構その気になった内蔵は、一度表子に会ってみようと、パズルで返事を書いたのだった。
そして返事がきて、 次の日曜日、 内蔵は表子と一緒に海に出かけた。初めて出会った表子は恥ずかしがりで大きな帽子を深くかぶっていて、なかなか顔を見せてくれなかった。
(そういえば、冴子先生もそうだなあ。パズル好きの女性はみんなそういう傾向があるのかもしれないなあ)などと内蔵は考えた。
表子は海辺に来ても、ほとんど口を開かなかった。内蔵は事務所の話などをペラペラしゃべったのだったが、表子は興味があるのだかないのだか、黙ってうなずくだけであった。
「あの、僕に会ってがっかりしました? 嫌いになりましたか?」
内蔵は怪訝そうにたずねた。すると、「そうね、嫌いかもしれない」と表子はつぶやいた。そして呆然とする内蔵のかたわらを駆け抜け、波打ち際に走っていった。そして大きな声で海に向かって叫び始めた。
「てめえ阿呆ちゃうか〜物干し竿でぶん殴るぞ〜!、前途はこりゃひどいね〜!、黒牛蛙と似てるし〜!、もうその鼻毛切れよ〜!、酢豚は腐ってるし〜!、ボロ金庫にでも住むんだね〜!、尻の汚い奴め〜!」
内蔵の頭の中はグチャグチャになった。
「てめえあほちゃうか?
ものほしざおでぶんなぐるぞ?
ぜんとはこりゃひどいね?
くろうしがえるとにてるし?
もうそのはなげきれよ?
すぶたはくさってるし?
ぼろきんこにでもすむんだね?
しりのきたないやつめ?
なんなんだ? いったい何が言いたいんだ?」
表子は振り返り、にやっと笑った。
表子の叫びにはいったいどんな意味が?!